平安恋物語



あと少しだったのに、私は闇に捕まってしまった。どんどん目の前の灯りから遠ざけられる。


私は、闇と同化されてしまった。







ガバッ!!


「はあ、はあ……」


な、に?あの夢……。


気持ち悪い……


冷や汗で体がぐっしょりしている。少し頭をすっきりさせよう……。


するりと涼しい夜風が入ってきた。暗闇の空には、満月の光がさしている。


それに導かれるように外に出た。火照った体に夜風が気持ちいい。


優しく暗闇を照らす満月を眺めていると、涙が溢れた。


声を上げて泣くなんて、幼いころに忘れてしまった。


ただ涙を零すだけ。満月に見入っていると、どこからかガタンと物音がした。