満月か……。 父に呼ばれ、出向いて見れば、正室である葵が危篤で先立ったという知らせだった。 今の側室の中で、自ら妻を選んだことはない。 全て父の命により、迎えたものばかりだった。 葵もそのひとりだった。 しかし、こんな俺を誰より愛してくれ、その愛は唯一信じられるものだった。 最後を見とれなかったのは、心から申し訳ないと思う。 葵…… 来世では、こんな男を愛してやるなよ……?