平安恋物語



「母上」


「憂!!」


会いに行けば、母はかき抱くように、力強く私を抱きしめた。


「あなたを一人残して逝くことを、どうか許してください」


「母上……っ、母上!」


まるで幼子のように、声を上げ、母にすがりつき、わんわん泣いた。


「憂、これを……」


母が取り出したのは、綺麗な髪飾りだ。


「これをあなたに。私と、父上のことを忘れないように」


そう言って、ぽろぽろ涙を零す私の額に、口づけをくれた。


「寂しがり屋のあなたには、ひどい仕打ちだと思いますが、憂には生きて欲しいのです」