平安恋物語



「憂様」


見かねた乳母が、優しく、壊れ物を扱うように、そっと抱きしめてくれた。


「……母上に会いたい」


「会いに行かれますか?すぐに準備いたしましょう」


「お願い」


廊下から、ぱたぱたとせわしなさそうに足音が聞こえてくる。きっと旅の準備だろう。


こうして目の当たりにすると、事実を受けとめなければならないのだろう……。