平安恋物語



そんな私を見てか知らずか、父は言葉を続けた。


「後日、亜希と離れた山里に行く。心残りなのは、お前の花嫁姿が見れないことだ」


「そんなこと……っ、言わないでくださいっ!」


ぽろぽろ、ぽろぽろ。


涙は枯れることなく溢れた。いつの間にか、父は去り、そこには私と乳母だけが残った。