「……ねぇ」 「………」 「ねぇ、聞いてんの?」 隣に聞こえるかどうかという声で話しかけると彼は目だけ私に向けた。 ……綺麗な目。 「何?」 相変わらずの優しい声に私はハッとして本来の目的を思い出す。 「ひ、樋流くんだよね?」 少しきょどった声で訊ねると彼は目を細めて、声は出してないけどクスクスと笑いながら答える。 「そうだけど?」 その笑みは、私が唐突な質問を持ちかけたことによるものもあったと思うが、私が彼の正体に気付いて質問したことを悟って笑ったかのようにも思えた。