ナオコへの思いがこの日を堺に強くなっていった。
ナオコをはもう会うことも、話すことも、抱くこともできない。だったらせめて、
あの香りを自分のものにしたくてしたくてならなくなった。

簡単なことだ、その香水を買ってこればよい。

しかし、どのブランドのどういう香水なのか全くわからないので探しようがないし、
人に聞こうにも、服や帽子や靴のように形で表現することもできないし、
音楽のように音で表現することもできない。

あの娘に「どこのどういう香水ですか?」
と聞くしかない。
しかし、あの娘のこともなにもわからない。
あの時、たまたま、あのスーパーに来ていたあの娘にどうやったら会える?

あのスーパーでずーっと待ち伏せしていたら会えるかもしれない。
あのスーパーの近所に住んでいるなら、あの辺をぶらぶらしていれば会えるかもしれない。

気の遠くなるような話だ。

くそ、あの時、気づけば、その場で聞けたのに。

自己嫌悪。

手詰まりだ。