ある日、久方ぶりに食材を買い込むために
スーパーへ向かう。

24時間営業だから俺のように昼間動くのがおっくうな人間にとっては助かる。

かごに必要な物品をつめる。

あとは、ビールがほしいな。

酒類のコーナーへ向かう。

俺がキリンラガーの500ml缶を三本とろうとすると
一本とり損ねて、床におちてしまった。
ビール缶は転がっていく。
俺は買い物かごを床において取りに行こうとすると、
だれかが転がり先で缶に手を差し伸べて、拾ってくれた。

「はい、どうぞ。」
その娘は俺に微笑みながら手渡してくれた。
女子高生のようだ。
制服をきている。 

まだおさなさが残る顔をしている。かわいい顔をしている。髪は申し訳程度に茶色がかっていてポニーテールで後ろに縛っている。若干の化粧をしている。
そして、懐かしい香りがした。

「あ、ありがとう。」

少しみとれてしまっていた自分が恥ずかしいのと、自分がぼさぼさの髪に不精髭をはやして、ジャージ姿という見っとも無い格好なのが恥ずかしいので、赤くなりながら、お礼をいった。

その娘は俺にビールを手渡すと、レジのほうに向かっていった。

俺はその娘がレジを済ませ外に出て行くまでずっと見ていた。

その後、俺はレジを済ませて家に帰った。

なぜか、あの子のことが頭からはなれない。
確かにかわいい娘だったが…。ただ、かわいい娘にあっただけで最近こんな気持ちになることはない。
しかし、なんでいきなり。

あの娘の香りが頭をよぎる。
あの香りのせいか…。
前に嗅いだことのある香りだ。
なんの香りだったっけ。

ぱっと、フラッシュバックがおきた。

ナオコのつけていた香水の香りだ。

俺は香水のことにうといから、どこのブランドのものだとかはわからないが、
ナオコがつけていた香水で、俺も好きだった香り。

ナオコと話しているときに、ナオコから香っていた。
ナオコの隣を歩いているときに、ナオコから香っていた。
ナオコとキスしていたときに、ナオコから香っていた。
ナオコを抱いていたときに、ナオコから香っていた。

そいいうことか。
結局、ナオコの影を追いかけているわけだ。

ナオコ、ナオコ、ナオコ。