紅き天

「たまには息抜きも必要だ。」



言うが早いか、疾風は静乃の手を掴んで立たせ、障子を開け、階段に踏み出した。



「ちょっと疾風!」



小声で止める静乃を無視し、疾風は足音を忍ばせて階段を降りた。


「不安か?」



うん、と袖をギュッと握る静乃に疾風は優しく笑いかけた。



「俺がついているから。」



な?と言い聞かせ、疾風は静乃に草履を履かせ、木更津呉服屋を出た。



「久し振りに、隣町以外の町に行ってみようか。」



わくわくしている疾風に、静乃はため息混じりに声をかけた。



「見つかったらどうするつもり?」


「その時はその時だ。




疾風は今にも鼻歌を歌い出しそうな勢いだ。



「まあいっか。」



出てきたものは仕方ない、と静乃は開き直り、疾風の横に並んで疾風の後をついて行った。