紅き天

くるっと振り向くと、疾風は一人残った佐吉と対峙していた。



疾風は少し切り傷を負っていて、時々痛そうに血を拭っていた。



「頑張って…。」



小さな声で応援して、静乃は屋根の上に登った。



ここからだとよく見える。



手を組んで祈りながら静乃は経緯を見守った。



そういえば、私疾風の戦っているところ初めて見るな。



これが疾風の戦法なんだろうか。



さっきから微動だにしない。



佐吉の方は右に左にと動いているが、疾風は目で追うだけだ。



何してるのよ疾風。



一思いに決着をつけて!



いつ佐吉が斬り掛かるか不安で、静乃はギュッと手を握り締めた。



ボソッと疾風が低い声で何か言った。



静乃には聞こえなかったが、佐吉は高い声で答えた。



「女に目が眩んだ馬鹿だから…。」



最後まで言い終えることなく、佐吉は倒れた。



疾風の腕が前に突き出たかと思うと、直後にはもう元に戻っていた。