「いらっしゃい。」




そう迎える声も労りの感じを含んでいる。



「もうわかっているんですね。」



静乃が微かに笑うと、彼女も笑った。



「なんとなく。」



昔から感がいいと聞いていたが、身をもって体験したのはこれが初めてだ。



「私は天涯孤独になってしまいました。」



疾風もだけれど。



「そうですか。」



その仕事とはどう見ても結びつかない優しい笑顔を浮かべ、妙は静乃を見た。



「まあ、お上がりなさい。」


「はい。」



静乃は一礼して草履を脱いだ。



そして静かな家の中に入る。



この家にはもう妙しか住んでいない。



妙の夫は静乃がずっと小さい頃に仕事で亡くなったらしい。