紅き天

もう決意を固めたようでぞっとした。



「馬鹿なこと考えるなよ。」



疾風が凄むが静乃には効果がない。



「馬鹿じゃないわ。
妥当な考えだもの。」


「妥当かよ。
お前、毎日が拷問だぞ。」



静乃は唇を噛んだ。



「わかってる。
いろいろ女の妬みもあるし?
将来の世継もあるし?
命の危険もあるし?」



わざとらしくおどけて見せ、明るく振る舞う。



それが余計に疾風を苛立たせた。



「こんな時にふざけんな!
真剣に考えろ!」


「考えたわよ!
お達しが出てからずっと!
所詮私は小娘で徳川の権力には太刀打ち出来ないの!
この身一つで勝負するしかないの!」


「だからって俺の前でそんな事言うな!
俺が守るくらいのことを言わせろよ…。」



急にしおらしくなった疾風に内心慌てながらも静乃は強気に出た。



「実際は守られてなんかいられない。
きっと飽きたら私も捨てられるわ。
それからこっちに舞い戻るから。」



それでも疾風を慰めることを忘れない、疾風が心配してくれているのはわかってるから。



でも、感情だけじゃ駄目なんだよ。



そう言いたいけどあまりにも酷だ。