紅き天

「嫌だ。」


「こっちが嫌だわ。
放して。」



最早敬語なんかかなぐり捨て、静乃は声を荒げた。



「何故だ?」


「嫌なものは嫌なの!」



どんどんと胸板を叩いて抗議するも、家光は放す気がないらしい。



「静乃!?」



久し振りに聞く愛しい声。



静乃は急いでその声の主を探した。



「疾…風。」



薬問屋から体を半分出したまま固まっている疾風を見つけ、目頭が熱くなる。



「知り合いか、狐。」



力を緩めないまま、家光が訊く。



「狐?」


「何でもないの。」



初めて聞いたであろう狐という呼び名に首を傾げる疾風に首を振り、静乃は近づこうとした。



が。



体は拘束されていて動かない。