僕は永遠に朝がこないのではないかと思える夜の漆黒(しっこく)の闇に取り残され、

虚(むな)しさがこみ上げてきた。

もうこれ以上何も感じたくなかった。

昇りつめて省庁で懸命に働いて信頼と人望を勝ち得た所で、

「変態」という烙印(らくいん)と孤独地獄の宿命は微動だにしない。

惨(みじ)めに涙がとめどなく頬(ほお)に伝わる。

懸命に生きてきたつもりなのに、どうしてこんなことをしているのだろう。

いったい、何が間違っていたのだろう。

詩音、僕たちはあんなに一緒にいたのにどうして先に独りで行ってしまったんだ。

大切に保存してきた集合写真の詩音は南国の真夏の海のように、

精気に溢れていて爽やかに微笑んでいる。

詩音、僕にはもう何も無いよ。

誰も僕を見ていない。

もう疲れきったよ。

僕はウィスキーを飲みつくし、溜め込んだ睡眠薬を大量に飲んで、

狭いラブホテルの一室で筆を取った。

私のために命を削って生きて育ててくれた老いた両親の悲痛な顔が浮かんだ。

過労で壊れた私のことを心配して、たまには実家に帰って来いという。

友達は今度飲んでゆっくり話そうという。

かわいいサークルの後輩達が、活気と先見性があった詩音や僕の時代を懐かしみ、今でも慕ってくれる。

でもいいんだ。

家族やサークルの仲間や大切な人たち。

みんなさようなら。

詩音のもとへ行くんだ。