俺は悔しくて、走った。

通り過ぎていくのはイヴを楽しむカップルばかり。

「…なんなんだよっ」

涙が出てきた。

「なんでこんなに俺は弱いんだ…」

曲がり角をまがった。

どんっ

「痛っ!」

知らない人とぶつかった。

相手が持っていた飲み物が散らばった。

「あ…すいません!!」

「いえ…俺が走ってたのがいけないんで」

2人で缶を拾う。

10個はあるだろうか。

『これを彼女は1人で…?』

そんなことを思った。

「あの…」

「…はい?」

「口から血出てますよ!もしかして今ので…?」

「あ、違います!ちょっとさっき…」

「そうなんですか…」

気まずい雰囲気が流れる。

「もしかして、ふられましたか?」

「えっ…」

「あ、ご、ごめんなさい!そうかなって思って…」

「まあ、当たりです」

俺は苦笑いした。

「そうですか…」

相手も苦笑いだった。

「あの、なんでそんなに飲み物持ってるんですか?」

「ちょっと…友達に頼まれまして…」

「そんな数を1人で…?」

「…」

彼女は泣き出してしまった。

「なんででしょうね…友達って、難しいですね」

「え?」

「今年、高校に入学したんです。でも友達とうまくいかなくて。」

「そうなんだ…」

「夏の補習でやっと1人友達が出来たんです。この子」

彼女は携帯の裏のプリクラを見せてくれた。

「…っ!!」

彼女の隣に写っているのはみゆきだった。

「彼女、本当に優しくしてくれて。でも…」

「でも…?」

「文化祭の日に、この子が好きだった男子が私に告白してきたんです。」

「え…」

みゆきの学校が文化祭の日、俺たちはまだ付き合っていた。

「このころからもう…」

「え?なにか知ってるんですか?」

「あ…いえ。それで?」



「そのとき、この子に見られてたんです。それからでした…いじめが始まったのは。」