食べ終わったパンの袋を小さく纏めてコンビニの袋に入れながら、時間を確認するために時計を見た。
亜矢が呼び出されたことによってのタイムロスはあるものの、まだ時間はある。
さて、肝心の亜矢は、何ともキレイに彩られた弁当を幸せそうに食べている真っ最中。
どうしたものか。
「亜矢。」
「…わかってるって。」
俺の言わんとすることがわかっているのだろう、一度頷き、用意周到に置かれたペットボトルを手に取りキャップを回してゴクリと喉を鳴らして潤した。
あれだけキレイに彩られていた弁当も、今ではそのほとんどを亜矢自身の胃の中に納められていて、無惨。
「簡潔にはなせよ。」
亜矢の性格上、焦らしながら相手の反応を見て楽しむ可能性があると判断し、俺は先手を打った。
亜矢はため息を吐き、わざとらしく肩を挙げた。
「簡潔にははなせる。結論は出てるんだ。」
「どういう」
「答えは明確でも、そこに行き着くまでの過程が導きだせないってやつ?」
俺の言葉を遮って、亜矢は早口にそう言うと苦笑した。
つまり、俺次第だと言いたいわけだ。
俺も苦笑し、ザァザァと降り続く雨を横目に首を降った。
教室は天気の影響を存分に受けて、異様なまでに湿気を纏っていた。
気のせいか、教室にいる誰もが普段以上に気怠そうにしている気がする。
そしてそれもまた、恐らくは天気の影響だろう。
「まずは簡潔にはなしてくれ。」
少し色素の薄い亜矢の瞳がキラリと鈍く光り、止まっていた箸を再び動かし始めた。


