恋々、散る


「はなしがあるなら、昼休みにでも聞いてやる。」

だから戻れと続けて、俺は開いていた真っ白のノートを閉じた。
三時限目は確か古典だったな。
ああ、それにしても今日の時間割りはなんてハードなんだ。

「でもさ」
「今は聞かない。はなしは昼休み。それができないなら、別のやつにでもはなしてくれ。」

大体、十分やそこらで亜矢のはなしがキレイに終わるとも思えない。だったら昼休みに聞くのが賢明だろう。

「ちぇっ…。すっげぇ情報なのに。」
「わかったわかった。」

頷き、俺があっちへ行けとジェスチャーで伝えると、亜矢にしては珍しく何も言わずすんなりと席へと戻っていった。


「すっげぇ情報、ねぇ…。」

「気にならないの?」
「ん?」

不意に、隣の席の女子がはなしかけてきた。名前は確か…鈴乃緋里(すずのひさと)。
あまり目立つ存在ではないものの、大きな瞳と肩で切りそろえられた髪が印象的な少女だ。
振り向いて首を傾げると、鈴乃は苦笑。
俺も苦笑。

「……全然。」
「そう、なんだ。」
「あいつのすげぇは、俺のくだらねぇだからな。」
「ふふ、本当に仲がいいんだね。」
「ん、そこそこ。」
「そっか。」

あっけなく、会話は終了。
チラリと横目で鈴乃を見ると、整理された机の中から古典の教科書を出しているのを見て、俺も机の中を探ることにした。俺の方は、整理整頓は案外苦手だったりする。
探すのも、一苦労だ。

(ああ、面倒くせぇ……。)