紫黒の瞬き

「これはここでは必要ないよ。」

そう言った男性は、私が顔を隠すように頭から被っていた布をするっと取り去る。
それから私の目をじっと見つめ、柔らかく笑みを零す。

「綺麗な瞳だ。きみは血が濃いのかい？」

その言葉に私の心臓は大きく跳ね上がった。
訝しげな目を向け男性を探るように見ていた私にジンが言う。

「大丈夫だ。彼はそんなんじゃない。」

そんなんじゃない。その言葉に彼等は私の事を知っているのだと理解する。
ジンにもアサガにも詳しい事は何も言っていない。
だけど二人は私の事情を分かっていて、私と一緒に居てくれたのだろうか。

「………」

私は唇を噛み黙りこくっていた。
私は二人と一緒に居れば、迷惑がかかるかもしれない。
そう思うと胸が苦しい。

「ああ、自己紹介がまだだったね。私はコルタ。この屋敷の主でジンとアサガにとってはお得意様だよ。」

にこりと笑い右手が差し出される。
私はその右手を少し躊躇いながら握り返した。