オルビナがそう易々と首を縦に振るとは思っていない。
あの時、自分の命を絶ってまで何かから逃げたかったのだ。

もう終わりにしよう。

そう思うぐらいに辛かったのだろうか。
一度生きる事を放棄したオルビナに、ここからもう一度始めよう、そう言ったところで受け入れてもらうのは簡単な事ではないだろう。

困惑の表情を浮かべるオルビナに俺は言い放つ。

「お前が一度捨てたその命。拾ったのは俺だ。
それをどうするのかは、俺の自由。お前は大人しく此処に留まればいい。」

心を閉ざしているわけではない。何か見えないものに怯え、壁を作る。
そんな壁は壊してしまえばいい。

「悪いようにはしない。安心しろ。」

少しぐらい強引でもいい。
その壁を俺は壊す。少しずつ少しずつ…。

それは“今”でなくて良い“これから”で良い…。

俯いていたオルビナが顔を上げると、その表情は少し和らいでいる。
そして、頬に赤みが差し本当の“オルビナ”を見たような気がした。