「そうか?」
「うん」
「………あー、でも。やっぱり迎え行くわ」
「…えっ?」
「会いたいからさ」
ぐいっと、あたしの心臓を鷲掴みしてくずるい人。
「…うん。じゃあお願い。終わる頃またメールするね」
そんなこと言われたら、断れるはずがない。
パタン、と閉じたケータイを胸の前で握り締めた。
はやくあいたい………
ついでだから新しい飲み物を持っていく。今度はカルピスソーダじゃない。
花梨と春が楽しそうに話す姿が視界に入ってくる。
ほんと仲良いなこの2人、なんて思いながら席に着くと、取ってきたオレンジジュースを口に含む。
「あ、もうこんな時間じゃん」
その声に顔を上げれば、春が自分の腕時計を見ていた。
あたしも携帯でさりげなく確認すると、21時を回ったところだった。
「明日は仕事だし、もう帰るわ」
「え?春さんもう帰っちゃうのっ?」
「ああ。学生とは違って、仕事はサボれないからな」
からかうような笑みを作る春に、
花梨は「サボらないもん!」とぷうと頬を膨らましながら言い返す。
そんな花梨に春は、
「当たり前だ」って言いながら、頭を撫でる。
その春の顔は、見たこともないくらい優しくて―――――…少しだけ、悲しげに顔が歪んだ。
…なにそれ。
まるで、見てはいけないものを見てしまった気分だった。

