あの頃と違う君を感じても、 なぜ、差し出された手を躊躇なく握ってしまったんだろう……。 冷たいあの手の感触が、昔の春の記憶に上書きされていく……。 昔のあたしは、どんな風に春という人に接していたんだろうか? どんなに頑張ってみても、思い出せなかった。 あたしの中の記憶が、ひとつも忘れないようにと、あんなに頑丈に鍵をかけていたのに。 バラバラと、消えていく…。 そんな気がした。