そういいたいのに、 どうしてもいわなきゃいけないのに、 涙が喉に詰まって、ヒッて小さな鳴咽にしかならなかった。 「…は、る……」 「あいつがまだ好きだったなら、そう言ってくれればよかったのに……」 枯れそうなほど、切ない声だった。 もう暦では春なのに、桜の蕾が付きはじめていたのに。 凍えるように、心が冷たい。 ねぇ…どうして、こうなったの。 涙さえ、もう止まってしまった。 「…それなら、人の気持ち、振り回すなよ…!」 ガチャン!と、春の手から飛んだ箱が錆び付いた門にぶつかった。