屋敷の奥に進んでいくと
明らかに他の部屋とは違う雰囲気の部屋があった。
きらびやかな襖にがぴっちりと閉じ切られ
開かずの間、と言った様子だ。
咎は眠らせた女中の服を脱がし
防御服の上から着た。
短い髪を手櫛で整え、ポーチに入っている変装用の紅を付けた。
そして、そっ…と襖を開けた。
「……失礼します」
中には中年の男が寝転んでいた。
この男こそが、今回のターッゲット。
この辺りの土地の領主だ。
依頼をしてきたのはこの領地と昔から対立している領地の領主だ。
悪評高い男らしいが
殺し屋は依頼が来たら任務を熟すだけで
ターゲットがいい奴だろうが悪い奴だろうが正直関係ないのだ。
「紅の香がする。おなごか」
「……はい。艶と申します…」
咎は甘く可愛いらしい声で偽りの名を名乗った。
「艶(エン)…か。良い名だ!
もう少し近う寄れ」
「…はい」
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