HDD彼女

――帰ったら、まずは買ってきたハードディスクをパソコンに接続しよう。

 それが俺の考えている最優先事項である。
 今日という日は、新たに購入したこのハードディスクに捧げる覚悟を持って挑んでいるのだから、これは当然の思考の成り行きというものであろう。

 ハードディスクをUSB端子に差し込んで、これまでパソコン内部に貯めてあるデータを、整理を兼ねて移植していくのだ。
 混沌としたパソコンの内部が綺麗に整理されて、溜まってしまったデータによって遅くなってしまっていたパソコンの動きが俄かに速度を取り戻すのである。
 この時、俺の脳内に訪れる快感は他に例えが無い爽快感を伴い、パソコンと共に自分の心まで重しが取れるような錯覚に陥る。
 勿論、これまでに溜め込んだデータの数々は宝物のような存在である。
 データそのものに価値があるし、その他人には到底理解しえないような価値の為に俺は無数と呼ぶに相応しい量のデータを保持しているのだ。
 しかし、このデータを整理した時に味合える快感に出会う為に、これまで無数とも呼べるデータを収集していたのではないか――データを整理しているこの時ばかりはそう思えてしまうのだ。