HDD彼女

 俺が棲家としているのは、親の遺産を使って購入した、2LDKの広さを誇るアパートである。
 ここでだけは誰にも気を使わなくても気兼ねなく生活できる俺の城である。

 まあ、家の中身はコンビニ弁当の容器や、カップラーメンの容器、それにお茶のペットボトルや買い溜めた雑誌や小説、コミックなどが層を成すほどに積み上げられており、世間で呼ぶところの『ゴミ屋敷』のような姿になりつつあるのだが――それでも、その状態にあって俺が使いやすいような仕様にカスタマイズされた快適な生活場所である。
 広さと、駅から自転車を使えば二十分という立地の良さから、決して安い買い物では無かったが、そのおかげで地域の治安も良いし、近隣にスーパーもコンビニも完備されているという極めて住み心地の良いアパートだ。
 アパートの住人も、他人に平気な顔で迷惑を掛けてくるような世間知らず学生のような存在は居らず、本当に普通に平穏なファミリー層ばかりが住んでいて――まあ、そんな中で俺だけが若干浮いたような存在なのだが……。