HDD彼女

 ギシギシという音を立てながら動くエレベーターが三階に到着して、ギギギ……という音を響かせながらエレベーターの扉が開く――と、同時に。小太りなメガネ野郎が俺が降りるよりも先にエレベーターに乗り込んで来る。
 息をハアハア言わせながら、何やら興奮冷めやらぬといった様子だ。

 目的の買い物を終わらせ、一刻も早く家に帰り、購入した商品を使用したいという気持ちであろうか。
 その気持ちは多少なり理解できなくもないのだが……。
 その興奮状態が理由で周囲は眼に入らなくなって、他人なんかは避けるまでもない障害物みたいになるものだ。
 一種の『買い物ハイ』とでも呼べば良いだろうか、脳内にエンドルフィンだかドーパミンだかの物質が充満してしまっているのだろう。
 俺だってそのような状態になったことは多々あるので、このデブの心情は理解できるつもりだ。

――ただ、理解はできても……それでもムカつくものはムカつくのだ。

 同属嫌悪にも近い気持ちで、苦々しい目つきでデブに一瞥をくれてやりながらエレベーターを降りる、と同時に扉が閉まり、デブを乗せたエレベーターは降下していった。