ＨＤＤ彼女

　『ジャンパラ』ビルの入り口に並んでいる激安の中古モニターをひやかし半分で一通り眺めてから自動ドアを抜けて店内に入る。
　人はそれなりに居るはずなのに、お世辞にも活気に満ちているとはいえないのがこの店におけるいつもの光景であり、この繁盛しているにも関わらずなぜかどことなく寂れたような空気が俺の気分を良くさせてくれる。

――これこそ電気街のあるべき姿である、と。

　店舗内の一階部分はマザーボードやメモリー、ＣＰＵ等を取り扱っている自作ＰＣ用のパーツ売場がメインとなっている。
　特にこの階には目当ての品というものは無いのだが、それでも掘り出し物が無いかと棚に並んでいる商品をチラチラと横目でチェックしながら店の奥に備え付けてあるエレベーターへと向かう。
　今日の買い物に於けるメインの目的物である外付けハードディスクは、サプライ関連商品コーナーのある三階に置かれてれている。

　ハードディスクに関してはネットで凡その調べが付いている。
　今日のところは買いたい商品が既に決まっていて、他に必要な品も無いのだ。
　買い物はそれほど時間もかからないだろう。
　そう考えながら、俺の他には誰も乗っていないエレベーターの３階ボタンを押す。