ぬばたまと呼ばれたのは紛れもない、漆黒の男。
無論、本名ではない。

漆黒の髪と瞳、そしてスーツに身を包む男のコードネームだ。

男の本名を知る者は少ない。
そして、アカツキはその数少ない一人である。


「何って…勿論、」


呆れたようなアカツキの声音。
ぬばたまは一呼吸置いて、にっこりと微笑んだ。


「下僕」


聖職者のように穢れなき澄んだ微笑。
それとは異なった無情の返答。

アカツキは何となくこの答えを悟っていた。
しかし、あまりにも清々しい答えっぷりに言葉も出ない。


「…なんてね。有能な友人だと思ってるよ」


「嘘付け!今のぜってぇ本気だっただろ!」


「やだなぁ、アカツキ。僕がそんな酷い人に見える?」


「見える!っつか家で寝てる奴パシリに遣う奴が善人な訳ねぇっ!!」


指を指すように、アカツキはぬばたまに向かって言葉をまくし立てる。

一方のぬばたまは、手に入れた紅茶葉を早速ティーポットに入れたところだった。