せめて、先生が私のことを忘れずにいてくれたら……

そう思って過ごした時は、やがて一年を越えた。


仕事にも慣れてきて、新しい生活にもようやくなじんだ頃、

私は、ポストの中に待ち望んでいた一通の葉書きを見つけた。


「会いに来てほしい」


そこには、たった一行、そう書かれていた。


「先生…どれだけ、待たせるの…」


先生が書いた文字を指でなぞり、私は住所を確かめた。

葉書きに書かれた住所……本来なら、先生が入院している病院であるはずのその住所は、

マンションらしき建物の名前と、末尾に「505」と部屋番号がついていた。