先生の住んでいる街は、駅前からちょっと離れると、

とても静かで、小さな川に沿って青草の茂る土手の風景が、のどかに続いていた。

「…ねぇ、先生、たんぽぽ」

外には、春のあたたかな風が吹いていた。

そよ風に、土手いっぱいに咲く黄色いたんぽぽが、揺れている。

「シロツメクサも咲いてるな…」

たんぽぽの黄色と、シロツメクサの白い色がコントラストのように、

川べりの土手を覆っていた。

「気もちいいね…先生」

「ああ……」

ちょっと先を歩いていた先生が、なにげなく手を差し出して、

私はその手を握った。