「で、レースはどうだったの?」

久しぶりに雪野に会った。

今日は隠れ家的存在の小さなバーで。

「優勝したよ」

「あら、おめでとう」

そう言ってグラスを掲げた雪野。

「久々の日本のレースだから多少は戸惑ったけどね」

俺は安堵の息をついた。

「…じゃあ、今までどこで走ってたの?」

「海外」

「ひょっとして、凄い人?」

その発言に俺は苦笑いをした。

「凄い人じゃないよ。
ただ、人より早く走れるだけ」