母の心音(こころね)

「あれから一ヶ月ほどした四月二十日やった。家から二十分ほど歩いた所に田圃があってな、仕事に行ったんや。ちょうど十時半の汽車が通り過ぎた。雑木林に囲まれて車がやっとすれ違えるほどの道でな、若芽が出てしっとりしとるんや。周りからは何の音も聞えないんや、自分独りや。太陽が照りつけてボカボカした長閑な陽気やった。末娘のことやら、次男坊のことやらを考えながら、沈んだ気持ちで下を向いて歩いて居ったんや。以前から鳴いて居ったんやろけど聞えなかったんやろな。姿が見えないけど鶯の声が一際大きく聞えたんや。どこかで自分を呼んで居るように聞えたんや、末娘が呼んで居るんじゃないかってな」



ただ独り
物思いつつ路行けば
鶯の声我の気を惹く