「そしてな、月を見て思ったんや。昔は子に世を譲り、年寄りは陰の人でよかったんやけど、今は違うってな。木起しをしなければ、大きな山は育たないってな。陰の人であってはならないってな、そう思ったんや。年老いてもやることは一杯あるんやって、そう思うとな、寂しがってばかり居ったらあかん。そう自分に言い聞かせたんや。だけどな、いくら自分にそう言い聞かせてもな、空っぽの家に帰るの寂しいんや。静まりかえって明かりのない真っ暗な家に帰るのがそりゃ寂しいんや」
香りたる
新しき世の流れかわ
波は厳しく寄せる我が身に
香りたる
新しき世の流れかわ
波は厳しく寄せる我が身に


