「杉木起こしに十日もかかったんや。倒れた木には添え木をしてな。その姿を見て我が子のように愛しく見えてな。同じ背丈の杉の木がスーっと立って、まるで背比べしとるようや。世間の荒波の中できっと四人の子供もそうやろな。大木になって世間に役立つような大きな山になるんやでって心に念じたんや。幼い木を見てなそんな気持ちになったんや。そしてな、最後の木を起こした時には、何時の間にやら月が出ておった。時の経つのを忘れとった。雪明りで回りは明るかったしな。主人と二人きりで山道を下りたんや。空っぽの家にな。そしてな、家路を辿りながら空を見上げたら、その半月が年老いた二人を見下ろしておるように思えてな。あんた達をちゃんと見ておるよってな、二人だけやないってな」
木越しの
一日を終えた帰り路に
半月だけが二人の上に
木越しの
一日を終えた帰り路に
半月だけが二人の上に


