季節外れの卒業旅行

「誰もいなくて、俺に白羽の矢が?」

「そうよ
一人で飲むよりは、いいでしょ?」

「じゃ、カップルにも声をかけますか?」

「嫌よ
いちゃいちゃしているところなんて見たくないわ
苛々するだけよ」

「同意見だ」

俺は微笑んでから、部屋のドアを閉めた

「え? 部屋で飲もうよ」

「いいえ。下の食堂で」

「どうして?」

「俺の時計がずれていなければ、今は23時を数分ばかり過ぎている
そんな夜遅くに、男女が個室にこもって酒を飲むのは如何わしい関係になる確率が高い
俺も我慢できるか…保障できない
貴方がそういう関係になりたいと思っているなら別だが……
残念ながら俺は、そういう関係を望まない
だから個室では飲まない」

真琴はにっこり笑うと、ワインを持っている手で俺を指さした