季節外れの卒業旅行

「あ…どうしよう
服が…」

沙羅の表情が曇った
きょろきょろと周りを見て、何かを探している

テーブルにあった布巾に徹が先に気がついて、手を伸ばした

「すみません! 洗って返します」

徹が頭を下げると、濡れたワイシャツを布巾で拭いてくれた

「あ…いえ」

え?
俺は布巾を握っている徹の手を凝視した

親指の腹と、人さし指第二関節にタコができている

こいつ……拳銃を使う?

それもタコができるほど頻繁に
日常的に拳銃を握っている

リボルバーの拳銃を使う人間にできる特有のタコが、なぜこの男に?

自己紹介では『会社員』と名乗っていた

会社員は日常的に拳銃など持たない

警察官か?

いや警察官だって持っていても、日常的には握らない

タコができるほど握るとするなら、オリンピック選手候補として訓練している警察官くらいだ

それに警察職員なら、『会社員』ではなく
『公務員』だろ?

なら……こいつは何の仕事をしているんだ?

殺し屋?
まさか

そんな人間がこんなところに来るかよ!