「ディナークルーズが15時に出港するか?
それに普通、知らない人間が船に乗り込んできたら、乗務員が気づく
なのにパーティルームの近くまで入ってきて、船長に声をかけられるまで、奥に入り込んでいたなんて……気にかかる」

「気にしすぎや
沙羅って女が…男か?…まあ、どっちでもええねんけど
そいつが時間と場所を間違えて乗り込んだんやろ
もしかしたら曜日すら間違えてかも、や」

「それに料理長も……」

「は?」

そうだ
瑞希は料理長に会ってない

「いや、何でもない
俺が気にし過ぎたんだろう」

「そやそや」

瑞希が俺の肩を叩いた

「細かいことを気にする男は女に嫌われるで
少しくらい大ざっぱがええねんって」

「お前は大雑把すぎる
部屋もゴミだめだし、臭いし
足の踏み場もない」

「男の部屋ってそんなもんやろ?
竜ボンが綺麗好きすぎるんや
本棚に並んでる本が少しでもずれてると、直したり
シリーズ化した本は1からぜーんぶ集めて、並べるなんて……めんどーくさっ
テーブルの埃も見つけただけで、布巾を持ってゴシゴシふいて……」

「それが普通だろ」

「竜ボンはA型やろ?」

「血液の型で性格が決まらねえって言ったのはどいつだ?」

「そんなん言った覚えはありせんけど…」

俺と瑞希は目を合わせると、笑い合った

「さあってと実花ちゃんにお礼言ってこようっと」

瑞希は嬉しそうに微笑むと、廊下をスキップで進んで行った

恥ずかしくないのか?
25歳の男がスキップって……俺は絶対にしないぞ