「お前に救いの手を伸ばしてやってもいいぞ
救い手は二つあるんだが…右手と左手…どっちがいい?」

「どっちなら俺が楽になるんや?」

「さあ? 右手?」

「んじゃ、左手や」

瑞希がトイレの鍵をあけると、少しだけ隙間をあけた

「ほら、左手」

俺は左手に持っていたペットボトルを差し出した

「水か……サンキュ」

「もう一つある」

俺は右手にある薬も渡した

「おお、ホンマに救いの手や」

トイレの扉を閉めると薬を飲んでいる音が聞こえてきた

「実花さんから薬は貰ったから、お礼言えよ」

「ああ、ありがたやぁ」

「今じゃねえよ」

「知っとるわ」

ごくっという音が聞こえると、ペットボトルのふたをしめているのが耳に入ってきた