「どうせ、彼女の両親に挨拶に行くだけやろ?
俺のはもっと重要なんだ!
俺の一生がかかってるって言っても過言はないで
しがない貧乏居候男が、金持ち男に生まれ変われるかもしれないビッグイベントや」

女か……
女を落とすために、俺を使うと?

「金持ち男ねえ…どうせ振られるのが落ちだ
やめておけ」

「なんや、なんや! 消極的な男はモテないで
親友の一生がかかってるイベントを無視できる男やとは思わへんかったで
あぁあ、お前の結婚式、俺がぶち壊したる!」

「壊す気でいるなら、結婚式に呼ばねえ」

結婚式っていつの話だよ
付き合い始めて、まだ2か月だ

デートの回数だって片手で数えられる

「んで、用件はなんだよ」

「おお、やっと親友の置かれている立場を理解してくれたようや
7月10日からな、2泊3日の旅に行こうや
金の心配はいらないで
俺が全てもったるさかい…って船着場までの交通費だけやけど」

携帯の中で、瑞希がケラケラと声を出して笑っている