季節外れの卒業旅行

「久我さんのお友達ですか? 
あ、えっと私は、金田実花と申します」

ポケットから名刺入れを出すと、一枚の名刺を俺に渡してきた

「旅行コンサルティングの金田さんですか
俺は藤城竜也です。名刺はあいにく持ち合わせてませんが、次回お会いするときにでも…」

俺は名刺を白ワイシャツの胸ポケットにしまった

「あ、私の友人の小林 真琴です
大学のゼミが一緒だったんです」

実花さんが、つまらなそうな顔で立っている女性を紹介してくれる

真琴さんは作り笑顔で会釈をすると、船のほうに視線を送った

「本当に時間がないんじゃないの?」

「大丈夫よ
私が乗らなきゃ、出港しないわ」

実花さんがにっこりとほほ笑む

「あら、でももう乗らないとだわ」

携帯で時間を確認した実花さんが口に出す

俺たちは、実花さんを先頭に歩き、船着場まで向かった