「エログッズか
妄想男は、エロさしか取り柄がないから気色悪っ」

「ムッツリスケベに言われとうないで」

瑞希の眉がぐいっと上がった

だがすぐに目を見開くと、重たそうな鞄から手を離して、車の助手席に向かって歩き出した

「竜ボン、まだ鍵をしてへんよな?」

俺は、鍵についているロックボタンを押そうとした指をはなした

「忘れ物か?」

「MDや
車の中で聞こうと思って持ってきたんやけど、竜ボン、ニュースばっかりやったから」

瑞希は車の中に上半身を突っ込んで、説明をする

「車の中で聞くなら、持っていく必要はないだろ?」

「眠れない夜に聞くんや」

緑色のMDケースを横にふりながら、俺に見せつけた

「眠れない夜ねえ」

どんな場所だろうが、どんな時だろうが、厭わずに寝られる体質のくせに。

「彼女が生理だった場合、俺は興奮したままベッドに横になるからなぁ
興奮した身体には音楽が一番やろ?」

「勝手に妄想してろ!
俺はそのMDを一回も使わずに終わると思うぞ」

瑞希が車のドアを閉めると、俺はキーロックをした

「かあ、嫉妬ですかぁ?
俺がうまく行きそうやからって、ネタむんやなで!」

「絶対にフラれるから、期待してない」

俺たちは、駐車場の真上にある出港ロビーに向かった