ここの医院では、うちの会社の薬をそこまで使ってはいなかった。


何でかは、誰も知らなかった。


無口で無愛想だけど勉強好きな先生と話を合わせるために、


私も小難しい医学論文を読んで行ったりして


ちょっとずつ仲良くなった。


この先生は、見た目が怖くて無口だから、


新しい担当者が来ると、だんだん会うのがイヤになって、あまり営業に来なくなってしまうらしい。


それに懲りずに通ってると、ほんとはいい人(っていうかシャイ)だって分かるんだけど。


仲良くなってから、なんでうちの薬をあまり使わないのか聞くと、


昔、たまたまうちの薬を出してた患者さんが亡くなったからだそうだ。


別に、先生も医者として、その薬との因果関係があったとは思ってないらしい。


その患者さんは高齢で、薬とは関係ない、別の持病があったらしいし。


でも、関係ないって分かっててもうちの薬を使いたくなくなったわけが


私には何となく分かった。