二日酔いで頭が痛いと言いながらも、道子さんは迎え入れてくれた。

シングルマザーでクラブのママをしている道子さん。
実は昨日まで名前を知らなかった。

昨日、エレベーターで道子さんの息子のケント君に会って、名前を知った。

「引っ越すんだね」

「はい」

道子さんが入れてくれたココアを飲む。程よい甘さで美味しい。

シフォンケーキをあっという間に平らげた彼女は、タバコに火を着けた。

「今までありがとうございました」

「別にアタシは何もしてないよ」

「そんなことないです。道子さんが言ってくれたこと忘れませんから」

「何か言ったっけ?」

「言いましたよ」

道子さんはとぼけるけど、覚えていると思う。
だから、こうして最後に迎え入れてくれたはず。