雨降りです。
けっこうな量です。
僕と君は傘をさして散歩をしていました。
 
 
車が水を跳ねていきます。
ことごとく全身で受け止める君。
傘で防ごうとした僕までびしょ濡れでした。
通行人が笑いながらみていたので、傘をばさばさしてびしょ濡れにしてやりました。
また歩きだします。
 
 
それにしてもここは都会で、高いビルと濡れたアスファルトの匂いで
街全体がちょっと素敵でした。
 
 
 
歩いていたら
前に誰もいなかったので
それじゃ、と思い
後ろを振り返ると君が立っていました。
じいっ と前を見ていました。
僕も前を見てみると、そこにあるのは踏切でした。
 
 
僕「どうしたんですか」
 
君「いや、ちょっと」
 
僕「…?」
 
君「ちょっと待って」
 
 
 
5分くらいでしょうか。
二人で並んで、傘をさして、踏切の前に立っていました。
 
その間、人も車も踏切を通りませんでした。
 
 
踏切のすぐ側には家がありました。
60歳くらいに見えるお婆さんが
傘をさして
少し焦った様子で出てきました。
 
君「………」
 
 
お婆さんが急ぎ足で踏切を渡り始めると
 
 
君「そっちには、もう行くんですか?」
 
 
振り返るお婆さん。
 
 
お婆さん「はい?」
 
 
君「いや、あの、ちょっとお婆さん…」
 
 
お婆さん「なんですか?急いでるんですけど」
 
 
君「えぇとですね……あの…」
 
 
いつになく君が迷いながら話しているので
何事だろうと思いましたが
まあ、放っておくことにしました。
 
 
 
まあ、わかっていたんですけどね。