10月10日 快晴。
今日がやってきました。
 
 
僕と君とで散歩していた時のことです。
君がなにやら僕の頭に直接イメージを伝えようとしているようで、中指を二本立てて僕の顔をみつめています。
 
 
「…はい」
 
 
言わんとすることはわかります。
要するに死んでくれ、と。
 
 
「ちがぁうよ?」
 
「君がどんな思いを伝えようとしていたとしてもそのポーズは百人にとって死んでくれですよ」
 
「ふーん」
 
 
 
にこやかな笑顔が眩しいくらいです。
 
 
「あっ。あれ、なんだろ」
 
 
約1m先に何か光るものが落ちていました。
 
 
「髪の毛です」
 
ひょいっと拾い上げて僕にその髪の毛を見せつける君。
 
「誰かの落とし物ですね」
 
「じゃあ届けてあげなければ」
 
 
 
やっぱり君は更に2m先に落ちている同じような髪の毛の方に向かっていきました。
 
 
次々と。
 
 
てんてんと。
 
 
髪の毛は落ちています。
 
 
 
気がつくと僕達はダンボールが群がった広場にいました。
その中のひとつのダンボールに髪の毛は入っていきました。
 
 
 
汚ならしいおばあさんがいました。
おばあさんの髪の毛は金色です。
 
「おばあさん、どうしたんですか」
 
「なんが」
 
「おばあさん、どうしたんですか」
 
「あ?なんが」
 
「おばあさんおばあさんおばあさ」
 
 
長引くと嫌なので僕は君を引きずってダンボールから出ました。
 
「ここはもう終わったひとたちの広場なんです」
 
「…」
 
 
 
君が突然いなくなりました。
何処へいったのか、少し探すと、でてきました。マッチを片手に。
やっぱり君はそうなんですね。
 
 
当然のように燃えるダンボールの群れ。
火だるまになる住人。
出てきたひとを竹槍でもう一度中に戻す君。
観察する僕。
 
 
辺り一面、焦げ臭い日でした。
 
 
君が鳴いています。
 
 
「おばあさんおばあさんおばあさん」