海にきた僕と君はいつものようにテトラポットを歩きました。
空が晴れています。
今日は天気の悪い日です。
 
 
「あの灯台まで歩きませんか」
 
君のひとことで僕は歩きます。
何も疑いません。
僕と君はぼくときみなのです。
 
 
二人で遠からず近からずの距離を歩いていたのに、突然その距離が変わりました。
君が海に落ちたのです。
 
 
急いで僕は君を助けようとします。
 
でも君はどんどん沈んでいくのです。
 
手が届きません。君との距離は潮の流れのせいで更に広がっていきます。
 
早くあげてあげなければ。
 
あたりを見回しました。
 
何もありません。
 
テトラポットばかりです。
 
なにか、ないか。
 
 
近くに釣りをしているおじさんがありました。
僕はそのおじさんを取りにいきました。
僕はそのおじさんを持って急いで君のところへ戻りました。
おじさんを頭から海に沈めて、君に掴ませようと思いました。
でも君は掴んでくれません。
もう迷いませんでした。
 
 
 
 
僕は海に飛び込みました。
 
 
 
 
「へっくしょい!」
テトラポットの上ではずぶ濡れのおじさんが震えていたのですが、君は息をしていませんでした。
 
 
僕と君の距離が一気に縮まっていきます。
 
 
 
あと2mm
 




ぱっ と君は目をあけました。
僕の目の前にいる君は、
 
 
「おはよう。」
 
 
と、にやにやしながら言いました。