彼は持っていた買物袋を落としそうになりながら、
私にこう尋ねたのだった。
「……王妃様?」
何を言われたのか分からなくて、私はぽかんとしていた。
後で知ったのは、買い物係の『高塚拓海』という名前と、
彼が十郎さんをからかって、
『国王陛下』と呼んでいるという事だった。
それはこのアパートが『宮殿』であり、
住人が『家賃という名の税』を納め、
まるで『勤労奉仕のような労働』をしなければならず、
なおかつ自分の生活において、
仕事や勉強をおろそかにしてはいけないという理由から、
国家を揶揄しているのだった。



