“俺様”大家の王国




(今、あの天井は何に見えるだろう……?)
 
鬼のような気がしてならなかった。

後ろめたさと共に、玄関に鍵をかけると、十郎は再び奥の部屋に戻ってきた。

複雑に絡み合ったコードがぞろりと広がる床。

なるべくコードを踏まないようにベッドに近付き、

先ほど何時間もそうしていたように、彼はベッドに寝そべった。

なるべく、物音を立てないようにしている。

彼は、傍らのノートパソコンを開いた。


そして今日の分の仕事の、まとめのような事をしながら、思い起こしていた。


初めて奈央がパレスに来た時の事を。



――ある日、今まで執拗に男性の入居希望者を送り込んできた不動産屋が、

遂に女性の入居希望者を紹介してきた。


しかし、不動産屋の話によると、彼女は金銭に困っている為か、

家賃の安い物件なら、ボロでも曰く付きでも覚悟の上だと言っている。


しかし、若いのにそれではあんまりだから、ここを紹介したというのである。