当主たる祖父は、遂に根負けしたように言った。
「具体的に、どうすうつもりだ」
「まず、僕はこの家から出ていきます。
そして、自分の力で、自分に見合った女性を探して、妻に迎えたいと思っています……」
「――なら、二年……。
これだけあれば、充分だろう」
「はい、ありがとうございます……」
「ただし、お前の連れてくる『花嫁』を、受け入れるかどうかは、分からんぞ。
それから、もし二年後にお前が誰も連れて来なかった場合……花嫁は、私が決める」
「ええ、それで結構です」
誰も、逆らう者はいなかった。
一族の中で当主の権力は、絶対なのだ。
十郎は、すくっと立ち上がると、ちらりと天井の絵を見上げた。
(鳳凰だ……)
十郎は、にこりと微笑むと、俄かにざわめき始めた広間を後にした。



