“俺様”大家の王国




十郎は、思った。

これまで、自分の生き方に目的意識というものが、無かった事を。

仕事などはそれなりに、目先の予定に打ち込むくらいの気持ちはあった。

 
彼は、パッケージをろくに見ずに、お菓子の袋を開けた。

そして、美味しいとも思わないまま、口に放り込んでは咀嚼した。

そのうち飽きて、また別の袋を開けた。

中身を暇つぶしのように食べながら、やがてそのお菓子にも嫌気が差し、別の袋を開封した。

どれも、同じような味がした。

しかし、それでもまだ執念深く、別な袋に手をかけた。


そんな事を繰り返しているうちに、彼の周りは食べかけのお菓子の袋でいっぱいになった。

彼は、また新しいお菓子を開けようと手を伸ばしかけて、自分の行動の意味の無さに、苛立った。

ふと虚しさが胸を掠め、腕を下ろした。
 

――中途半端。
 

今の自分を表現する最適な言葉だと思った。

愛人達との付き合いも、モラルもお構い無しに惰性と欲のまま、

ずるずると続け、いたずらに輪を広げている。


自暴自棄というほど、物事を諦めているつもりはなかったが、あらゆる事が重荷になり、それがかなり面倒だとは思っていた。